2015年

10月

16日

消費税の軽減税率に思う

つい先日、消費税の軽減税率導入の代替案として財務省からマイナンバーカードを利用した還付案が公表されたが、驚くほどのマスコミ各社から非難にさらされ、早々に取り下げとなった。

食料品等への軽減税率の導入について、税理士会、商工会議所、中小企業同友会、経団連など企業サイドの団体以外は反対しているが、その他多くの団体は導入を支持している。

我々税の専門家からすれば、なぜに軽減税率の導入をここまで強く主張するのは全く理解できない。経済学、財政学の有識者も多くは反対だと思われる。

では、なぜ、軽減税率の導入は避けるべきなのか。新聞などでは導入に伴い中小企業の税計算が複雑になるためと言われるが、結局は低所得者の負担感を減らすべきという論調を優先すべしという論調になっている。

しかし、少し考えてみればわかることだが、軽減税率の導入が低所得者に有利などということはあり得ない。なぜなら、食料品を購入するのは低所得者も高額所得者も同様であり、寧ろ高額所得者のほうが購入金額が大きくなることが一般的であろう。そうすると、本来であれば税優遇をすべきでない高額所得者が最も軽減税率による恩恵を受けることになる。

では、本来恩恵を受ける必要のない高額所得者が受けた減税分は消費税であれ、はたまた所得税、法人税といった別の税目であれどこかで穴埋めをしなければならない。配偶者控除の廃止は議論されているが、結局は別の形で増税となり、結果として高額所得者が受けた恩恵は別の形で誰かが負担することになる。もちろん、このだれかを高額所得者に限定される政策となればよいが、その保障は無く、寧ろ、いたずらに税計算を複雑にしていくだけとなる。

税理士会は一貫して、「消費税の給付付き税額控除制度」の導入を求めている。これは「低所得者に所得税の税額控除を付与し、税額が控除額に満たない者には給付等による対応ができる制度」であり、一般的な税額控除と違いは、税額がマイナスの場合は還付を受けることが出来るという点である。

これであれば、高額所得者が軽減税率の恩恵を受けることは無く、対象とされる納税者は限定的となり、制度的にも非常に簡単であることから、多くの有識者は賛意を表明している。


しかし、新聞などで報道される内容は軽減税率一辺倒となっていることに違和感を感じる。


新聞各社が述べている財務省の還付案への批判の多くは、買い物するごとに支払い金額が減らなければ、消費者の痛税感が緩和されないというものであった。一回の買い物で食料品の増税額はせいぜい数百円程度だと思われるが、これが消費者の痛税感を和らげるとはとても思えない。

寧ろ弱者救済という大義名分を掲げた保身と考えるべきであろう。


税というのは経済活動にとって中立でならなければならない。仮に軽減税率が導入されれば、対象品目を扱う事業者は必然的に、経済活動を有利に進めることが出来る。これは絶対に避けなければならない。この点も軽減税率に反対すべき大きな理由である。


本日の新聞で2015年度補正予算案に、低所得者に対する3万~5万円の給付措置を盛り込む案が浮上している旨の記事が掲載されていた。


なぜにこのような案は出てきても、「消費税の給付付き税額控除制度」は議論されないのか。


真に国民の利益に資する議論を行ってもらいうことを切に願っている。