社会保険事務の改正の案内

税理士の武田です。9月は社会保険制度では一つの区切りの月であり、10月より標準報酬月額の変更とともに、今年も多くの改正が入ります。

新聞報道等で大々的に報道されている改正点として社会保険の加入要件の引き下げがあります。これは中小企業には関係ありませんが、簡単に紹介しておくと、一週間の労働時間が20時間、月給88000円を超える労働者にまで拡大されました。20時間というと典型的なパート労働者であっても十分に加入条件を満たす水準です。但し当面は従業員数が500名を超える会社のみに適用となっています。

 

次に厚生年金の標準報酬月額の下限がさらに引き上げられました。これまで、厚生年金の標準報酬月額の最低は98000円でした。つまり、給料が50000円であっても、厚生年金の計算上は98000円の給料として計算されることになっていましたが、今回88000円という等級が新設されました。結果として給料が93000円未満の方の厚生年金保険料は1等級分安くなるということなります。これは、社会保険の加入要件が拡大され、月給が88000円以上であれば強制加入になるため、これまでのように無条件で1等級上の保険料が徴収されるとなると、負担感が大きくなるために新設したものと考えられます。

 

ちなみに、余談ですが、パートタイマー以外で月給が93000円以下などありえないと思う方もいらっしゃると思いますが、意外と多いのではないかと思います。どういう方かと言うと、会社の代表者の方です。この場合、単純に売り上げが思うように上がらず、致し方なく役員報酬を下げているというケースと意図的に役員報酬を引き下げているケースがあります。特に後者のケースは、社会保険労務士などがコンサルタントと称して、よく提案するスキームです。

例えば、個人事業として商売している方がいらっしゃるとします。売り上げも順調に伸びてきたし、税理士さんからもそろそろ税金対策も考えて法人なりを勧められています。しかし、会社を設立すると、今度は社会保険に強制加入となり、その金額は役員報酬の30%にも上ります。そこで、個人事業主としての事業と並行して会社を設立して、売り上げを分散させたうえで、会社で社会保険に加入します。その場合、個人事業者として十分な収入があれば、役員報酬は低く設定したうえで、節税対策をとることになります。

 

最後に、超マイナーな改正ですが、兄姉の扶養家族に入れる要件にも改正がありました。これまで、弟妹を扶養に入れる場合は収入要件だけで判断されていましたが、兄姉の場合は収入要件と合わせて同居していることが必要でした。しかし、これは同じ兄弟姉妹でありながら、年上年下というだけで要件が異なるのは不自然ということで、兄姉の同居要件は撤廃されることとなりました。